特定技能外国人の労働時間はどのくらい?残業OK?企業が知っておくべきルール【ホテル業界向け】

特定技能 労働時間

外国人材の受け入れが進むなか、ホテルで特定技能の外国人を雇用する企業も増えています。特定技能の制度は、即戦力となる外国人を現場で受け入れることができ、日本人と同様の労働時間で雇用できます。また、残業や休憩、割増賃金なども、すべて日本の労働基準法に基づいて適用されるため、適正な管理が求められます。
ホテル業界は、早朝や深夜勤務、繁忙期の長時間労働など、働き方が不規則になりやすい特徴があります。そのため、労働時間に関するルールを正しく理解し、外国人スタッフにも分かりやすく説明することが非常に重要です。

この記事では、特定技能外国人の労働時間に関する基本的なルールと、適正に管理するためのポイントを解説します。

特定技能制度について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください!
特定技能とはどんな在留資格なのか分かりやすく解説!ホテル・旅館の外国人採用

特定技能外国人の労働時間は「日本人と同条件」が適用


特定技能 労働時間

特定技能の在留資格を持つ外国人は、日本人労働者と同じ条件で働くことが認められています。つまり、労働時間や残業、休憩などのルールはすべて日本の労働基準法が適用されます。「外国人だから多少長く働かせてもよい」という考え方は誤りであり、適切な労務管理をしなければ受け入れ停止処分や行政指導の対象となるリスクがあります。

ホテル業界では、早朝や深夜のシフトがあるほか、繁忙期には長時間勤務が続くことも珍しくありません。そのため、特定技能の外国人を受け入れる企業は、法律を正しく理解したうえで、現場での勤務状況を徹底して管理する必要があります。

労働基準法による基本の労働時間・残業時間のルール


特定技能 労働時間

ここでは、特定技能の外国人にも適用される労働基準法に基づく基本的なルールを解説します。

①労働時間の制限

日本の労働基準法では、「1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならない」という上限が定められています。この法定労働時間は、特定技能の外国人にもそのまま適用されます。
たとえば、朝9時から18時まで(休憩1時間)のシフトで週5日勤務の場合、ちょうど週40時間となり、これが基本の労働時間の上限となります。

ただし、ホテル業界では曜日や季節によって忙しさが異なり、1日あたりの勤務時間や週ごとの出勤日数にばらつきが出ることがあります。このようなケースでは、繁忙期の勤務時間を長くする代わりに閑散期の勤務時間を短くできる「変形労働時間制」を活用することで、法定内で柔軟な働き方が可能となります。この制度の導入には、あらかじめ就業規則に記載したうえで労使協定の締結が必要です。

所定の労働時間に応じた休憩・休日のルール

労働基準法では、働く時間に応じて、決められた休憩時間を与えることが義務づけられています。

1日の労働時間必要な休憩時間
6時間を超える場合45分以上
8時間を超える場合60分以上

原則として、休憩は労働時間の途中に与える必要があります。勤務の終わりにまとめて休憩を取る、というような対応は認められていません。

ホテルでは交代制で業務を回しているため、どの時間帯に誰が休憩を取るのかを明確にしておかないと、休憩を取れずに働き続けてしまうケースがあります。特定技能外国人は遠慮して申し出ないこともあるため、事前に必要な休憩時間や取り方を説明しておきましょう。さらに他のスタッフが声かけを行うなど、しっかり休憩を取れる環境づくりが欠かせません。

また、休日についても、1週間に1日または4週間に4日以上の休日(法定休日)を設けるように定められています。連勤が発生しやすいホテルでは、スタッフの体調面も考えて、徹底したシフト管理を心がけましょう。

②残業時間(時間外労働)の制限

特定技能外国人に残業させることはできますが、日本人と同じように「36(サブロク)協定」を締結する必要があります。36協定とは、企業が従業員に法定時間を超える労働をさせるために必要な労使間の取り決めで、労働基準監督署への届け出が必要です。
36協定が締結・届出されていないにもかかわらず、日常的に残業させている場合は労働基準法違反にあたります。

また、36協定を結んでいたとしても、残業時間には上限が決められています。原則として月45時間以内、年間360時間以内とされており、これを超えて働かせることはできません。ただし、特別条項付きの36協定を結ぶことで、月80時間、年720時間までの残業が認められることがあります。その場合も、原則である月45時間を超えられるのは年6か月までとされており、違反すると罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となる可能性があります。

「本人が希望しているから」「稼ぎたいと言っているから」といった理由で長時間労働を認めてしまうと、あとでトラブルの原因になることがあるため、労働基準法に則って正しく管理しましょう。

時間外・深夜・休日労働には割増賃金が必要

残業や深夜勤務、休日出勤が発生した場合には、日本人と同様にそれぞれに応じた割増賃金を支払うことが義務づけられています。

  • 時間外労働(残業):通常賃金の25%以上を上乗せ
  • 深夜労働(22時~翌5時):通常賃金の25%以上を上乗せ
  • 休日労働(法定休日に働いた場合):通常賃金の35%以上を上乗せ

このような割増分を含めた賃金は、給与明細などで分かりやすく表示し、外国人スタッフにも理解できるように説明しましょう。雇用する外国人の母国語での説明資料を用意することも効果的です。

特定技能外国人の労働時間を適正に管理するポイント


特定技能 労働時間

特定技能の外国人が安心して働くためには、法律を守るだけでなく、実際の現場での運用もしっかり行うことが大切です。特に、ホテルのように早朝や深夜の勤務がある業種では、シフトの調整や勤務時間の記録、休憩の取り方などでトラブルが起こりやすいといえます。

ここでは、特定技能の外国人の労働時間を適切に管理するために気を付けたい3つのポイントを紹介します。

①契約時に労働条件や就業規則をしっかり伝える

雇用契約を結ぶときは、勤務時間や休憩、残業のルールを分かりやすく伝えることが大切です。日本語に自信がない方のために、母国語に翻訳した契約書や多言語マニュアルを用意することが望ましいでしょう。
「週に何日働くのか」「残業があるときはどうなるのか」「休憩時間はいつか」など、実際のシフト例を見せながら具体的に説明すると理解が深まります。説明後には、本人がきちんと内容を理解したか確認し、契約書にサインをもらったうえで、そのコピーを渡しましょう。

こうした説明に不安がある場合や、外国語での対応が難しいと感じる場合は、登録支援機関のサポートを活用することも効果的です。登録支援機関は、契約内容や就業規則の説明を外国語でサポートし、双方の認識がずれないように通訳する役割を担っています。特に初めて外国人を受け入れる企業にとっては、言葉や文化の壁を乗り越えるための頼れる存在といえます。

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②休憩時間の割り当てを明確にする

法律では、6時間を超えて働くときは45分以上、8時間を超えるときは60分以上の休憩を取ることが決められています。
しかし、ホテルでは忙しくて休憩のタイミングが逃したり、本人が遠慮して休憩に入れなかったりすることがあります。そのため、あらかじめ勤務表にスタッフそれぞれの休憩時間を明記し、「○時になったら休憩に入ってください」と上司や先輩スタッフが声をかけるなど、現場での工夫が必要です。

また、「休憩は仕事の一部であり、取らないと法律違反になる」ということも事前に伝えておきましょう。休憩スペースとして利用できる場所があることも案内し、気軽に休める雰囲気をつくることが大切です。

③定時前後の声かけで残業を把握・防止する

長時間労働をさせないためには、定時前後の声かけも効果的です。「予定通りに終われそうか」「残っている仕事がないか」と声をかけることで、残業の可能性に気づきやすくなり、外国人も相談しやすくなります。

ホテルでは、お客様の対応が長引いたり、急な予約が入ったりするなど、予定外の残業が発生することがあります。外国人スタッフの中には、「忙しいから帰ってはいけない」と感じて、気づかないうちに残業が常態化してしまうことも考えられます。体への負担も考えて、声かけだけでなく、残業が分かった時点で上司に相談するルールを設けるなどで対策しましょう。

外国人に限らず、職場全体で残業しないためのルールを徹底し、お互いに声をかけ合うことで安心して働ける環境づくりにつながります。残業が多い状況が続くようであれば、シフトの組み方や業務の分担を見直すことも検討しましょう。

特定技能外国人の労働時間を正しく理解し適切に管理しよう


特定技能 労働時間

今回は、特定技能で働く外国人の労働時間について解説しました。
特定技能で働く外国人も、日本人と同じ労働者として扱われるため、労働時間や休日・休憩、残業、賃金に関するルールはすべて日本の労働基準法が適用されます。法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせるには36協定の締結が必要であり、残業や深夜労働には割増賃金も発生します。さらに、所定の労働時間に応じた休憩の確保も義務化されています。

特にホテル業界は、シフト制や早朝・深夜勤務などが多く、働き方が不規則になりやすいため、従業員一人ひとりの労務管理を適切に行うことが非常に重要です。適切な労働時間の管理は、スタッフの定着や職場環境の改善にもつながるため、今一度ルールを見直し、現場での運用につなげていきましょう。

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