【2025年最新】外国人雇用で使える助成金はどんなものがある?支給額はいくら?ホテル・旅館の外国人採用

外国人雇用 助成金

人手不足が深刻化する中、即戦力となる特定技能外国人の雇用を検討する企業が増えています。特にホテルや旅館などの宿泊業では、多言語対応や異文化理解といった強みを持つ外国人材が活躍しやすく、積極的な受け入れが進んでいます。しかし、採用や受け入れ体制の整備には一定の費用がかかるため、導入をためらう企業も少なくありません。
そこで活用したいのが、国が提供する助成金制度です。外国人を雇用する企業向けに、さまざまな助成金が設けられています。

この記事では、特定技能の外国人雇用で活用できる主な助成金について、受給要件や支給額、受給までの流れを紹介します。

外国人雇用で使える助成金4選


外国人雇用 助成金

外国人を雇用する企業向けには、環境整備や教育訓練、正社員化などを支援する助成金があります。特定技能外国人を対象としたものも多く、条件を満たせば宿泊業でも活用可能です。

ここでは、特定技能の外国人雇用の際に利用できる代表的な助成金を紹介します。

①人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人が安心して働ける環境づくりを行う企業に対して、かかった費用の一部を支給してくれる制度です。特定技能で外国人を受け入れる企業には、外国人の生活支援や社内の支援体制の整備などが義務づけられていますが、そのような外国人への義務的支援にかかる費用の一部を支給してもらえます。特定技能の外国人を初めて雇う企業や、今後受け入れ体制を強化したい企業にとって、コストを抑えられるだけでなく、外国人の定着率アップにもつながるため、積極的に活用したい助成金の一つです。

この助成金では、企業が実際に取り組んだ就労環境整備措置に対して定額の支給が受けられます。たとえば、清掃や接客マニュアルの翻訳、館内案内の多言語化、外国人向けの相談窓口の設置などが対象です。

助成対象の就労環境整備措置

  1. 雇用労務責任者の選任
  2. 就業規則等の多言語化
  3. 苦情・相談体制の整備
  4. 一時帰国のための休暇制度の整備
  5. 社内マニュアル・標識類の多言語化

支給額

就労環境整備措置は、それぞれ「通訳費」「翻訳機器導入費」「翻訳料」「弁護士・社会保険労務士等への委託料」「社内標識類の設置・改修費」として助成対象となり、1つの措置の導入・実施につき20万円が支給されます。最大4つの措置に対して支給されるため、80万円が上限額となります。
なお、これまでは実際にかかった経費に対して助成率(中小企業で最大72万円、大企業で57万円)が適用される仕組みでしたが、現在は「措置ごとの定額支給」に変更されています。

受給要件

主な受給要件は以下のとおりです。

受給要件

  • 「就労環境整備計画」を作成し、労働局長の認定を受けること(認定前に実施したものは対象外)
  • 認定された「就労環境整備計画」に基づいて外国人労働者に対する就労環境整備措置を導入、実施すること(就労環境整備措置の1と2の両方に加え、3〜5のいずれか1つ以上を選択して導入、実施が必要)
  • 就労環境整備措置の実施日の翌日から6ヶ月経過するまでの期間、外国人労働者の離職率が15%以下であること
  • 雇用保険の適用事業主であること
  • 「外国人雇用状況届出」を適正に届け出ていること
  • 過去にこの助成金を受け取ったことがある場合は、最後に支給された日から3年以上経過していること
  • 計画期間が始まる6か月前から計画が終わるまでの間、事業主のすべての事業所において、雇用保険に加入している従業員を解雇等していないこと
  • 外国人労働者の離職率が15%以下であること
  • 社会保険の適用事業所であること

(参考:厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)ガイドブック

受給までの流れ

この助成金を受給するまでの流れは以下のとおりです。

  1. 就労環境整備計画を作成し、本社の所在地を管轄する各都道府県の労働局またはハローワークに提出
  2. 認定を受けた計画に基づいて外国人労働者に対する就労環境整備措置の導入
  3. 導入した就労環境整備措置を計画通りに実施
  4. 計画期間終了後、本社の所在地を管轄する各都道府県の労働局またはハローワークに支給申請
  5. 審査後、助成金の支給

(参考:厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)ガイドブック」)

計画の提出は、計画期間の初日の1か月前までに行います。郵送で提出する場合は、書類が労働局またはハローワークに届いた日が提出日となるので、発送日には十分注意しましょう。

②人材開発支援助成金(人材育成支援コース)

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、従業員のスキルアップを目的に実施した職業訓練に対して、費用の一部が助成される制度です。もともと設けられていた3つのコース(特定訓練コース、一般訓練コース、特別育成訓練コース)が、「人材育成支援コース」として1つに統合されました。

コースは1つに統合されましたが、訓練の種類は3つに分かれており、それぞれ助成額が異なります。

訓練種別訓練方法と目的
人材育成訓練・10時間以上のOFF-JT
・職務に関連した知識及び技能の習得を目的とした訓練
認定実習併用職業訓練・OJTとOFF-JTの組み合わせ(6か月以上)
・主に新卒者向けの訓練
有期実習型訓練・OJTとOFF-JTの組み合わせ(2か月以上)
・有期契約労働者などの正社員化を目的とする訓練

(参考:厚生労働省「令和7年度版 人材育成支援コースのご案内(令和7年4月1日版)」)

この助成金は、外国人労働者も対象となっており、特定技能で入社した外国人に対して日本語教育や業務に必要な研修を行う場合にも利用できます。たとえば、宿泊業であれば、フロントでの接客マナーやレストランサービスの基本などの研修が助成対象となります。研修にかかる費用としては、外部講師への謝礼、教材費、会場費、通訳費用などの研修経費に加え、研修に参加した時間に支払った賃金(時給相当額)も助成対象です。また、OJTを実施すると、訓練費用の一部として定額の助成を受けられます。

特定技能の外国人は、入社時に業務経験が少ないこともあるため、こうした研修支援制度を活用することで、早期の戦力化と職場への定着が期待できます。 ただし、この助成金を利用するには、訓練開始前にあらかじめ訓練の内容や実施方法を記載した計画を提出し、認定を受ける必要があります。研修が始まってから申請することはできないため、採用前後のタイミングで計画を立てておくことが重要です。

支給額

この助成金では、訓練の内容や方法に応じて、賃金の一部や訓練にかかる経費が助成されます。助成額は、訓練方法(OJT・OFF-JT)や企業規模によって以下のように異なります。
また、訓練を修了した従業員に対して「賃金を5%以上アップ」または「資格手当などの支給により3%以上の賃金アップ」といった要件を満たすと、助成金の支給額が加算されます。手当を支給する場合は、就業規則などにその内容を明記したうえで、実際に支給していることが条件となります。

<賃金助成額(全訓練共通)>

通常分(1人1時間当たり)賃金要件・資格等手当要件を満たす場合
中小企業:800円
大企業:400円
中小企業:1,000円
大企業:500円

<経費助成率>

訓練種別通常分賃金要件・資格等手当要件を満たす場合
人材育成訓練<正規雇用者>
中小企業:45%
大企業:30%

<有期契約者>
70%
<正規雇用者>
中小企業:60%
大企業:45%

<有期契約者>
85%
認定実習併用職業訓練中小企業:40%
大企業:30%
中小企業:60%
大企業:45%
有期実習型訓練75%100%

たとえば、外部のマナー講習に特定技能の外国人5人を参加させ、1人あたり3万円の費用がかかったとすると、経費合計は15万円です。このうち、中小企業の場合、通常であれば45%の6万7,500円、賃金要件などを満たせば60%の9万円が助成されます。

ただし、1人1回の訓練ごとに上限が設定されており、以下のように訓練時間に応じて異なります。また、1事業所1年度あたりの限度額は1,000万円となるため、複数の研修を実施する場合は合計額に注意して計画しましょう。

<経費助成限度額>

10時間以上
100時間未満
100時間以上
200時間未満
200時間以上
中小企業:15万円
大企業:10万円
中小企業:30万円
大企業:20万円
中小企業:50万円
大企業:30万円

<OJT実施助成額>

訓練種別通常分(1人1コース当たり)賃金要件・資格等手当要件を満たす場合
認定実習併用職業訓練中小企業:20万円
上記以外の企業:11万円
中小企業:25万円
上記以外の企業:3万円
有期実習型訓練中小企業:10万円
上記以外の企業:9万円
中小企業:13万円
上記以外の企業:3万円

(参考:厚生労働省「令和7年度版 人材育成支援コースのご案内(令和7年4月1日版)」)

受給要件

各訓練に共通する主な受給要件は以下のとおりです。

  • 雇用保険の適用事業主であること
  • 事前に訓練実施計画を提出し、労働局長の認定を受けていること
  • 訓練開始の6か月前から助成金支給決定日までの間に、対象労働者を含む従業員に対して解雇などの不適切な対応をしていないこと

対象となる従業員は雇用保険に加入していることが前提です。そのため、特定技能の外国人を対象とする場合も、雇用契約や保険加入の状況をしっかり確認したうえで申請の準備を進めましょう。

受給までの流れ

主な流れは以下のとおりです。

  1. 訓練内容や対象者、実施日程などを決定し、職業訓練実施計画を作成
  2. 訓練開始日の1か月前までに管轄の労働局またはハローワークに提出
  3. 計画に基づいて訓練を実施
  4. 訓練終了日の翌日から2か月以内に管轄の労働局またはハローワークに支給申請
  5. 助成金の支給

(参考:厚生労働省「令和7年度版 人材育成支援コースのご案内(令和7年4月1日版)

③キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金(正社員化支援・処遇改善支援)は、非正規で雇用している人を正社員にしたり、昇給や手当の見直しなどの処遇改善を行った企業に対して支給される制度です。外国人も対象となっており、特定技能で働く外国人を正社員として安定的に雇用し続けたい企業にとって役立つ制度です。
特定技能の在留資格では、基本的に最初から正社員(またはフルタイムの契約社員)として雇用することが求められていますが、一定期間を経て雇用契約を無期に変更したり、賃金や待遇を改善した場合にも、この助成金を活用できる可能性があります。

キャリアアップ助成金は、「正社員化支援」と「処遇改善支援」があり、それぞれ以下のようにコースが分かれています。正社員化支援については、帰国が前提であることや在留期間に制限があることから、技能実習生と特定技能1号の外国人は対象外です。

正社員化支援処遇改善支援
・正社員化コース
・障がい者正社員化コース
・賃金規定等改定コース
・賃金規定等共通化コース
・賞与、退職金制度導入コース
・社会保険適用時処遇改善コース

支給額

支給額は各コースごとに異なります。ここでは、各コースで受け取れる最大支給額を紹介します。

コース支給額
(1人または1事業所あたり)
正社員化コース中小企業:最大80万円(40万円×2期)
大企業:最大60万円(30万円×2期)
障がい者正社員化コース中小企業:最大120万円
大企業:最大90万円
賃金規定等改定コース中小企業:最大7万円
大企業:最大4.6万円
賃金規定等共通化コース中小企業:60万円
大企業:45万円
賞与・退職金制度導入コース中小企業:最大56万8,000円
大企業:最大42万6,000円
社会保険適用時処遇改善コース中小企業:最大40万円(10万円×4期)
大企業:最大30万円(7.5万 円×4期)

(参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内(令和7年度)」)

受給要件

全コースに共通する主な受給要件は以下のとおりです。

  • 雇用保険の適用事業所であること
  • 各事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いていること
  • キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局に提出していること
  • 対象労働者の労働条件、勤務状況、賃金の支払い状況、賃金の算出方法を明らかにすること
  • キャリアアップ計画に基づいて、計画期間内に正社員化または処遇改善を取り組んでいること

(参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)

受給までの流れ

主な受給までの流れは以下のとおりです。

  1. キャリアアップ計画を作成し、実施日の前日までに管轄の労働局またはハローワークに提出
  2. 就業規則等の改定
  3. 改定した就業規則等に基づいて正社員化、処遇改善
  4. 正社員化または処遇改善後、6か月分の賃金の支払い
  5. 賃金の支払った翌日から2か月以内に支給申請
  6. 審査後、助成金の支給

(参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)

④雇用調整助成金

雇用調整助成金は、景気の悪化や災害、観光客の激減などで仕事が一時的に減ってしまったとき、従業員を解雇せずに休ませたり、職業訓練を行った場合に、会社が支払う手当や賃金の一部を補助してくれる制度です。

この助成金は、日本人だけでなく、雇用保険に加入していれば特定技能で働く外国人にも利用可能です。たとえば、ホテルや旅館でインバウンドの予約が急減し、一部のスタッフに休業をお願いせざるを得ないときなどに、休業手当を支給しながら雇用を維持するための支えになります。

また、支給の対象となるのは、休業だけでなく、仕事が少ない期間に実施する社内研修(教育訓練)や、他の事業所への一時的な出向なども含まれます。コロナ禍では広く利用された制度ですが、現在も業績の急変に備えて活用できる制度として継続されています。

支給額

雇用調整助成金では、事業主が休業手当や研修中の賃金として従業員に支払った金額に対して、あらかじめ定められた助成率をかけた額が支給されます。助成率は、企業の規模や実施した雇用調整によって異なります。
また、出向の場合も助成対象となり、出向元が負担した賃金の一部に対して助成が行われます。ただし、支給額は出向前の賃金の半分までが上限となり、そこに助成率をかけた金額が支給されます。

雇用調整の内容助成率
(1人1日あたり)
教育訓練加算額
(1人1日あたり)
休業・教育訓練中小企業:2/3
上記以外の企業:1/2
1,200円
出向中小企業:2/3
上記以外の企業:1/2

(参考:厚生労働省「雇用調整助成金」)

受給要件

対象事業主の主な要件は以下のとおりです。

  • 雇用保険の適用事業主であること
  • 最近3か月の生産量や売上などが前年同期比で 10%以上減少していること
  • 雇用保険被保険者数(派遣者含む)が前年同期比で増加していないこと(中小:10%超か4人以上/大企業:5%超か6人以上)
  • 労使間協定に基づいて休業や出向を実施していること
  • 過去に雇用調整助成金の支給を受けていた場合は、その対象期間終了後から1年以上経過していること
  • 休業や出向の対象とした労働者は、休業開始時点で雇用保険加入から6か月以上経過していること
  • 不正や法令違反等に該当していないこと

(参考:厚生労働省「雇用調整助成金ガイドブック(令和7年4月1日現在版)」)

受給までの流れ

受給までの手続きの流れは以下のとおりです。

  • 休業や教育訓練、出向などの雇用調整の具体的な計画
  • 雇用調整の計画届を管轄の労働局またはハローワークに提出
  • 計画書に基づいて雇用調整の実施
  • 管轄の労働局またはハローワークに支給申請
  • 審査して支給額の決定後、助成金の支給

(参考:厚生労働省「雇用調整助成金ガイドブック(令和7年4月1日現在版)」)

外国人雇用は助成金を活用して負担を軽減!


外国人雇用 助成金

今回は、外国人雇用で使える助成金について解説しました。
近年、特に人手不足が深刻化している宿泊業界では、特定技能の外国人材の活躍がますます期待されています。一方で、言語や文化の違いから、受け入れ側にもさまざまな準備や配慮が求められます。そこで、国の助成金制度を上手に活用すれば、職場環境の整備や人材育成にかかる費用を抑えながら、外国人スタッフの定着や早期の戦力化が期待できます。
助成金の多くは、事前の申請や計画書の提出が必要となるため、採用前後のタイミングで早めに準備を進めておくことが大切です。外国人雇用をスムーズに進めるためにも、どのような助成金があるのかしっかり理解し、状況に適した制度を活用しましょう。

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