【ホテル業界向け】特定技能の賃金の相場はいくら?給与の決め方やトラブル回避のポイント

特定技能 賃金 相場

特定技能の外国人を雇用するにあたって、「賃金はいくらに設定すればよいのか」「日本人と同じでよいのか」など、賃金に関する疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
特定技能制度では、「日本人と同等以上の報酬水準」が求められており、安易に低く設定すると罰則の対象となる可能性もあります。また、地域や業界、雇用するホテルの規模によって賃金の相場も異なるため、何を基準に賃金を決めるのか正しく把握しておくことが重要です。

この記事では、特定技能外国人の賃金相場や、賃金を決める基準、注意点までを詳しく解説します。制度に沿った適正な賃金を設定し、トラブルなく安定した雇用につなげるために、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。

特定技能制度について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
特定技能とはどんな在留資格なのか分かりやすく解説!ホテル・旅館の外国人採用

【2025年最新】特定技能の賃金の相場


厚生労働省が発表する「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、日本で働く外国人全体の賃金の相場は24万2,700円でした。

在留資格ごとの賃金の相場は以下のとおりです。
なお、ここで紹介するのはすべての業界を含めた相場です。実際の賃金は、勤務先のホテルや旅館で同じ業務にあたる日本人の賃金を基準に決める必要があるため、以下の相場とは異なることがあります。

在留資格の種類賃金相場勤続年数ホテル・旅館で行える主な業務
身分に基づくもの
(永住者・定住者など)
300,300円6.5年制限なし
専門的・技術的分野
(特定技能を除く)
292,000円3.3年フロント、通訳、企画、マーケティング、事務、営業
特定技能211,200円2.2年フロント、接客、レストランサービス、広報、企画
技能実習182,700円1.7年チェックイン・チェックアウト作業、接客、料理の提供、会場準備など
その他
(特定活動および留学以外の資格外活動)
226,500円1.7年アルバイトとしてフロント、接客、レストランサービスなど
身分に基づくもの
(永住者・定住者など)
賃金の相場:300,300円
勤続年数:6.5年
ホテル・旅館で行える主な業務:制限なし
専門的・技術的分野
(特定技能を除く)
賃金の相場:292,000円
勤続年数:3.3年
ホテル・旅館で行える主な業務:フロント、通訳、企画、マーケティング、事務、営業
特定技能
賃金の相場:211,200円
勤続年数:2.2年
ホテル・旅館で行える主な業務:フロント、接客、広報、企画、レストランサービス
技能実習
賃金の相場:182,700円
勤続年数:1.7年
ホテル・旅館で行える主な業務:チェックイン・チェックアウト作業、接客、料理の提供、会場準備など
その他
(特定活動・留学以外の資格外活動)
賃金の相場:226,500円
勤続年数:1.7年
ホテル・旅館で行える主な業務:アルバイトとしてフロント、接客、レストランサービスなど

(参考:厚生労働省「在留資格区分別にみた賃金」)

もっとも給与が高いのは、身分に基づく在留資格(永住者や定住者など)を持つ外国人で300,300円でした。特定技能と比較すると、約10万円の差があることが分かります。

このように、在留資格によって給与に差が出てしまうのは、資格ごとに従事できる職種や仕事内容が異なるためです。
たとえば特定技能1号は、外食業や宿泊業、介護、建設など、あらかじめ定められた分野に限って就労が認められており、従事できる職種や仕事内容も決められています。一方で、「技術・人文知識・国際業務」などの専門的・技術的分野の在留資格や、「永住者」「定住者」などの身分に基づく在留資格では、同じ分野でも事務職や管理職など、賃金水準が高い傾向にある職種にも就くことが可能です。
そのため、特定技能が就ける職種と、他の在留資格で就ける職種とでは、職種自体の平均賃金に差があることが給与の差につながっています。

また、特定技能1号は在留期間が1年・6か月・4か月ごとの更新制で、通算で5年までという上限があります。これに対し、身分に基づく在留資格には在留期間の制限がなく、より長期的なキャリア形成が見込まれます。そのため、責任ある仕事やリーダー的な役割を任され、結果的に賃金も高くなる傾向があります。

特定技能の賃金は何を基準に決める?


特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用する場合、どのように賃金を決めればよいかは、運用要項・労働基準法の2つの観点から考える必要があります。ここでは、賃金の基準となるそれぞれの観点について紹介します。

①特定技能運用要項

特定技能制度では、待遇に差が出ないように「日本人と同等以上の報酬を支払うこと」が義務づけられています。特定技能の外国人と同じ業務を担当する日本人を比較対象とし、給与額を決定します。
たとえば、フロント業務を担当する日本人が月給22万円であるなら、特定技能の外国人にも22万円以上の賃金を支払わなければなりません。また、月給だけでなく、賞与(ボーナス)や各種手当(通勤手当・深夜手当など)も含めた合計金額で比べる必要があります。

②労働基準法

日本国内で働くすべての労働者には、外国人であっても労働基準法が適用されます。労働基準法では、最低賃金が定められており、割増賃金(時間外・深夜・休日)の支払いや休憩・休日の付与なども義務付けられています。最低賃金の遵守はもちろん、割増賃金(時間外・深夜・休日)の支払いや休憩・休日も日本人と同じく付与することが義務付けられています。

たとえば、時給制の場合は各都道府県ごとに定められている最低賃金を下回らないように設定しなければなりません。また、残業が発生した場合には、定められた割増率に応じた時間外手当の支払いも必要となり、残業代の未払いがあれば違法行為と判断される可能性があります。

特定技能の賃金の支払いに関する注意点


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特定技能の外国人を雇用する際には、賃金の額面だけでなく、支払いや説明の仕方にも配慮が必要です。日本人と同等以上の待遇を守っていたとしても、制度や法令の理解が不十分なまま支給や控除を行うと、外国人本人との信頼関係が崩れたり、行政指導の対象となることもあります。
ここでは、特に注意すべきポイントを3つに分けて説明します。

①時間外労働・夜勤・休日出勤は割増賃金を適用する


特定技能の外国人が、時間外や深夜、休日に働いた場合は、労働基準法で定められた割増賃金を支払う必要があります。日本人と同じように、外国人にも同じルールが適用されます。

  • 時間外労働(残業):通常賃金の25%以上を上乗せ
  • 深夜労働(22時~翌5時):通常賃金の25%以上を上乗せ
  • 休日労働(法定休日に働いた場合):通常賃金の35%以上を上乗せ

ホテル業界は、他の業界と比べて深夜勤務や急な残業が発生しやすいです。そのため、どのようなケースで割増賃金が適用されるのか今一度きちんと把握し、労働時間を正確に管理することを徹底しましょう。

また、賃金だけでなく、労働時間も日本人と同じ基準が適用されます。「外国人だから長く働かせてもよい」「本人が希望しているから残業させても問題ない」といった対応は法律上認められていません。
特定技能の外国人の労働時間については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
特定技能外国人の労働時間はどのくらい?残業OK?企業が知っておくべきルール【ホテル業界向け】

②賞与・手当は日本人と同等に支給する

割増賃金以外の手当や賞与(ボーナス)についても、日本人と同じ基準で支給します。「同等以上の報酬」とは、基本給だけを指すのではなく、以下のような手当も含まれます。

  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 資格手当
  • 役職手当
  • 賞与

たとえば、日本人の従業員に年2回賞与を支給している場合、外国人にも同様の賞与を支給することが原則です。「賞与や手当は外国人には適用しない」といった対応は法令違反であり、罰則の対象となる可能性があります。

③給与控除について分かりやすく説明する

特定技能の外国人に給与を支払う際は、日本人と同様に法定控除が発生するため、事前に控除の内容を分かりやすく説明することが大切です。所得税や住民税、健康保険や厚生年金などの社会保険料について、仕組みやどのくらい給与から引かれるのかを説明しましょう。特定技能の外国人は、日本の給与制度についてよく知らないことが多く、「思っていたより手取り額が少ない」といった誤解がトラブルの原因となることがあります。外国人の母国語での通訳や、翻訳した資料などを用意して、外国人がきちんと理解できるような事前説明を十分に行うことが重要です。

また、住居費や光熱費などを給与から差し引く場合は、あらかじめ契約書などで控除の内容を明示し、本人の同意を得る必要があります。実費を超えて控除したり、明示なしに天引きすることは認められていません。

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特定技能の賃金を正しく設定してトラブルを防ごう


今回は、特定技能の賃金の相場について解説しました。
特定技能で働く外国人には、日本人と同じ労働条件が適用され、賃金についても「日本人と同等以上」の水準が求められます。最低賃金を下回ったり、同じホテルで働く同職種の日本人の賃金よりも低く設定することは認められていません。深夜勤務や時間外労働が発生した場合の割増賃金や、賞与・各種手当も日本人同様に支給しなければならないため、徹底した労務管理と正しい制度理解が重要です。外国人との間に誤解が生じやすい給与控除の説明や、就業前の労働条件の確認、通訳対応などに不安がある場合は、登録支援機関の活用も検討しましょう。

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