永住権とは?取得条件や申請手続きについて分かりやすく解説!ホテル・旅館の外国人採用

永住権とは

永住権とは、外国人が日本に期限なく住むことを認められる権利のことです。
永住権を持つ外国人は、在留期間の更新や就労制限がなく、日本人とほぼ同じ条件で働くことができます。人手不足が続くホテル業界にとって、安定して働ける人材を確保できる点は大きな魅力といえます。

また、雇用している外国人スタッフが永住権の申請を行う際には、勤務先である企業のサポートが必要になることがあります。申請書類の発行や在職証明の提出など、企業が関わる場面も多いため、永住権の仕組みを理解しておくことが重要です。

この記事では、外国人が永住権を取得するための条件や申請の流れについて分かりやすく解説します。

永住権とは?


永住権とは、外国人が日本に期限なく住むことを認められる権利のことです。外国人が永住権を認められると、在留資格の「永住者」を取得することになります。

永住者には、職業や就労時間に制限がなく、在留期間の更新も必要ありません。日本人とほぼ同じように働くことができるため、ホテル業界でもさまざまな職種で活躍できます。フロントやサービススタッフ、清掃といった現場での業務をはじめ、企画、営業、管理部門などのバックオフィス業務も任せられます。
企業にとっては、他の在留資格を持つ外国人と違って、制限を気にせず長期的に雇用・育成できることが大きなメリットです。

また、永住権を取得しても国籍は出身国のままであるため、日本の選挙権など一部の権利は持ちません。日本人とまったく同じ扱いになるわけではありませんが、働くうえでの制限はほとんどなく、安定して生活できる資格といえます。

一方で、永住権を取得するには、日本での在留年数や納税・年金の支払い状況など、一定の条件を満たす必要があります。取得には時間がかかりますが、日本で安定した生活を送りたい外国人にとっては非常に魅力的な資格です。
雇用している外国人が永住権の取得を希望する場合、企業側にも書類準備のサポートなどを求められることがあります。必要書類や申請条件、手順などをしっかり把握しておくことで、外国人スタッフのキャリア支援にもつながります。

永住権を取得するための3つの条件


永住権は、すべての外国人が簡単に取得できるわけではなく、法務省が定める条件を満たす必要があります。
ここでは、永住権を取得するための3つの条件について見ていきましょう。

①素行が善良であること

1つ目の条件として、過去に犯罪歴や行政処分を受けたことがないなど、日本の法律や社会ルールを守って生活していることが求められます。
交通違反の回数が多い、税金を滞納しているといった場合は、永住許可が下りにくくなります。

②独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること

2つ目は、日本で安定した収入を得ており、生活保護などに頼らず生活できることも重要な条件です。
勤務年数が長く安定して働いている、一定の役職・技能または資産を持っているなど、継続的に収入を得られる状況であることが求められます。職業や雇用形態は問われませんが、経済的に自立していることが確認できれば、永住権の申請が通りやすくなります。

③永住することで日本の利益となると認められること

3つ目の条件は、その外国人が永住することで「日本社会にとってプラスになる」と判断されることです。この条件は、さらに細かい基準が設けられています。

  • 原則として日本に10年以上在留していること
  • 懲役刑や罰金刑などを受けていないこと
  • 納税や各種保険料の支払い、届出など、公的義務を適正に履行していること
  • 現在持っている在留資格に規定されている最長の在留期間で在留していること
  • 外国人本人が感染症や薬物中毒でないなど、公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと

(参考:法務省 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)」)

永住権の申請にあたって条件免除となる例

以下のいずれかに該当する外国人は、①素行が善良であること、②独立の生計を営むに足りる資産または技能を有することの条件を満たさなくても、永住権を申請できます。

  • 日本人の配偶者や子
  • 永住者の配偶者や子
  • 特別永住者の配偶者や子

以上に当てはまる外国人は、家族として日本に根ざした生活を送っていることが前提とされます。つまり、日本での生活基盤がすでに安定しているとみなされるため、一般の申請者とは異なる扱いとなります。

また、以下の外国人については、②に関する条件が免除されます。
人道上の理由から日本での永住が特別に認められる場合があり、生活の安定度にかかわらず申請が可能とされています。

  • 難民認定を受けている人
  • 補完的保護対象者の認定を受けている人
  • 第三国定住難民

さらに、状況によっては「原則10年在留」の条件も免除される可能性があります。次の章で詳しく解説します。

永住権申請のための「原則10年在留」に関する特例


永住権の申請では、「原則として日本に10年以上継続して在留していること」が条件とされています。ただし、在留資格や活動内容によっては、10年未満でも永住権を申請できる特例があります。
ホテルで働く外国人の中にもこれらの特例に該当する場合があるため、どのようなケースで特例が認められるのか確認しておきましょう。

10年未満でも永住権を申請できるケースには以下のようなものがあります。

  • 日本人または永住者、特別永住者の配偶者や子
    婚姻関係や家族関係が安定していると認められる場合、配偶者は3年以上、子は1年以上の在留で申請可能
  • 「定住者」の在留資格を持ち、5年以上継続して在留している人
  • 「難民」または「補完的保護対象者」の認定を受けてから、5年以上継続して在留している人
  • 外交、社会、経済、文化等の分野で日本への貢献が認められ、5年以上在留している人
  • 「高度専門職」の在留資格を持つ人
    「高度専門職ポイント制」で70点以上なら3年、80点以上なら1年の在留で申請可能

(参考:法務省 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)」)

永住権の申請について


永住権を取得するには、原則として永住を希望する外国人本人が申請する必要があります。
企業としても、雇用している外国人が永住権を申請する際にスムーズに手続きを進められるよう、基本的な仕組みを理解しておきましょう。

申請者

永住権の申請は、原則として外国人本人が行います。
ただし、条件を満たす場合は、本人以外でも永住権の申請手続きを行うことができます。

申請できる人

  • 永住を希望する外国人本人
  • 外国人本人の法定代理人
    (本人が18歳未満または成年被後見人の場合)
  • 取次者(法務省の承認を得ており、本人の依頼を受けた人)
    • 本人が勤務している企業の職員(雇用主を含む)
    • 本人が研修や教育を受けている機関の職員
    • 監理団体や外国人支援を目的とする公益法人の職員
    • 弁護士や行政書士で、地方出入国在留管理局に届け出ている人

(参考:法務省 出入国管理庁「永住許可申請」)

このように、申請は永住権を希望する外国人本人が行うことが原則ですが、法定代理人や行政書士、職場の上司などに依頼するケースもあります。
専門家に依頼する場合は、事務所によって異なりますが、一般的に12〜15万円の費用がかかります。申請者の就業状況や同居家族の有無などによっては、さらに高額となることがあります。

必要書類

永住権の申請には、身分証明書や在留カードのほか、在職証明書や課税証明書など、多くの書類が必要です。
主な提出書類は以下のとおりです。

  • 永住許可申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm、申請前3か月以内に撮影したもの)
  • 永住許可を必要とする理由書
  • 申請人を含む家族全員の住民票
  • 職業を証明する資料
    • 在職証明書(会社勤務の場合)
    • 確定申告書控えおよび営業許可書の写し(自営業の場合)
  • 住民税の課税証明書および納税証明書
  • 所得税および復興特別所得税、消費税、相続税、贈与税に係る納税証明書
  • 健康保険証または国民健康保険証の写し
  • ねんきん定期便またはネットの「各月の年金記録」の印刷画面
  • 預貯金通帳の写しまたは不動産の登記事項証明書
  • 身元保証書
  • 了解書
  • パスポートまたは在留資格証明書(窓口で提示)
  • 在留カード(窓口で提示)

(参考:法務省 出入国在留管理庁「【就労資格】永住許可申請にかかる提出書類一覧表(概要)」)

企業は在職証明書の発行に加え、必要に応じて給与明細書や源泉徴収票、推薦状などを求められることがあります。必須ではないものの、本人の収入や勤務実態、人柄、社会的信頼性を証明する資料として有利に働く可能性があります。ホテルでの勤務実績や雇用の安定性も評価対象となるため、継続的に雇用していることを証明する資料としても役立ちます。

また、外国人の現在の在留資格によって必要な書類は異なります。提出書類に不備があると審査が長引くこともあるため、慎重に準備を進めていきましょう。

申請先

永住権の申請は、申請者(外国人本人)の居住地を管轄する地方出入国在留管理局の窓口で行います。
受付時間は平日の9時から12時、13時から16時までです。

外国人本人が申請に出向く場合、企業側には人員配置やシフトの調整を求められることがあります。スタッフの安心感や信頼に繋げるためにも、日頃からシフト管理を徹底し、柔軟に対応する姿勢が大切です。

審査期間

永住権の審査には、現在かなりの時間がかかります。
法務省の公表によると、これまで永住者への在留資格変更にかかる期間は4か月ほどとされていましたが、令和7年7月時点での平均審査期間は309.9日となっています。つまり、申請から結果が出るまで約1年かかっているようです。
書類に不備があったり、申請先の入管によってはさらに時間がかかることもあります。雇用している外国人が永住権を申請する際は、結果が出るまで時間がかかることを見越して計画的に進めていきましょう。

なお、在留審査処理期間(審査にかかる平均日数)は、法務省の公式サイト「在留審査処理期間」でも確認できます。申請予定がある場合は、事前に最新情報を確認しておきましょう。

審査が終了すると、入管からハガキやメールで通知されます。許可が下りた場合は在留資格が「永住者」に変更され、今後は在留期間の更新が不要となります。

永住権は就労制限なし!人手不足の解消に役立てよう


今回は、永住権について、申請条件や手続き、審査にかかる期間などを解説しました。
永住権とは、在留資格の「永住者」を取得することを指し、外国人にとって日本での在留期間や就労に制限がなくなることが大きなメリットです。
現在雇用中の外国人スタッフが永住権を取得すれば、企業にとっても長期的な雇用の安定につながります。企業側も永住権申請の仕組みをしっかり理解し、必要に応じて申請を支援できる体制を整えておきましょう。

ただし、取得には長期の在留実績や安定した収入、納税・社会保険の適正な履行など、厳格な条件を満たす必要があります。
また、審査には時間がかかるため、申請書類の不備に注意し、最新情報を確認しながら慎重に進めることが大切です。

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