特定技能の外国人は有給休暇を取得できる?ホテル業界が知っておくべき基本ルール

特定技能 有給休暇

特定技能の外国人を雇用するにあたって、「有給休暇はどのように対応すべきか分からない」「そもそも有給休暇は与えなければならないのか」と悩む企業も多いかもしれません。とくにホテル業界では、繁忙期や人手不足の影響もあり、有休取得に対して慎重に判断しなければならない場面もあるでしょう。

特定技能で働く外国人にも、日本人と同じく有給休暇を取得する権利があります。これは、労働基準法に基づく正当な権利であり、企業側もしっかり理解しておく必要があります。

この記事では、特定技能の外国人が有給休暇を取得できる条件や、実際によくある取得のタイミング、対応時の注意点について、分かりやすく解説します。

特定技能制度について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
特定技能とはどんな在留資格なのか分かりやすく解説!ホテル・旅館の外国人採用

特定技能の外国人も有給休暇を取得できる


特定技能 有給休暇

日本で働く以上、特定技能の外国人にも有給休暇を取得する権利があります。
「外国人だから有給休暇はないのでは?」と誤解されることがありますが、実際には日本人と同じように、条件を満たせば有給休暇を取得できます。そのため、就業規則やシフト管理などの運用においても、日本人の従業員と同等の扱いが必要です。

ただし、制度やルールを正しく理解してもらうためには、母国語での説明が必要となるケースも少なくありません。自社で外国語を使ったサポートが難しい場合は、登録支援機関への委託がおすすめです。
登録支援機関は、受け入れ企業に代わって、外国人の就業・生活をサポートする専門機関です。母国語での説明や質問対応も可能なため、有休制度の周知や誤解によるトラブル防止にも役立ちます。
登録支援機関については、以下の記事をご覧ください。
登録支援機関とは?ホテル・旅館の外国人採用

外国人にも労働基準法が適用

特定技能の外国人が有給休暇を取得できるのは、国籍や在留資格に関係なく、すべての労働者に「労働基準法」が適用されるからです。有給休暇だけでなく、労働時間や休憩・休日、割増賃金などの制度も日本人同様に適用されます。
「今は休まれると困る」と感じる場面があっても、正当な理由がなければ、有給休暇の取得希望を拒否することはできません。管理側の判断で対応を遅らせると、法律違反となるおそれがあるだけでなく、外国人スタッフとの信頼関係にも影響します。

ホテル業界では、長時間労働や深夜勤務が発生しやすく、繁忙期や予約状況により勤務時間が不規則になることも少なくありません。そのため、有給休暇の管理を後回しにしがちですが、制度を正しく理解し、柔軟に対応することが大切です。

労働時間や残業の取り扱いついて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
特定技能外国人の労働時間はどのくらい?残業OK?企業が知っておくべきルール【ホテル業界向け】

有給休暇の基本ルール

有給休暇は、正式には「年次有給休暇」といい、労働者が一定の条件を満たしたときに、給料をもらいながら仕事を休める制度です。正社員やパート・アルバイトに関係なく、日本で働くすべての労働者に認められた権利であり、特定技能の外国人にも同じルールが適用されます。

有給休暇は、原則として以下の条件を満たすと発生します。

  • 入社後6か月間継続して働いている
  • 全労働日の8割以上を出勤している

この2つを満たせば10日の有給休暇が付与され、勤続年数に応じて徐々に増えていきます。1年6か月で11日、2年6か月で12日、3年6か月で14日というように毎年加算され、最大で20日となります。
企業によっては、従業員の働きやすさや管理のしやすさを考慮し、法律で定められた付与日よりも前に有給休暇を付与したり、入社月ごとに付与日を統一する運用をしていることがあります。

基本的には外国人側から取得希望があれば、企業はそれに応じて有給休暇を与える必要があります。ただし、希望された日にその人が休むことで事業の運営に支障が出る場合には、「時季変更権」を使って他の日に変更してもらうことも可能です。繁忙期で明らかに人手が足りなくなることが予想されるなど、適切な理由があれば取得時期をずらしてもらうことが認められています。

また、有給休暇には2年間の有効期限があります。取得せずに期限が過ぎると消滅するため、定期的な取得状況の確認と申請方法の周知を徹底し、計画的に取得するよう促すことが望まれます。
さらに、2019年4月の労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、1年に5日以上取得させることが義務化されました。違反すると30万円以下の罰金が科される可能性があるため、外国人スタッフを含めた全従業員の取得状況を企業側で把握・管理することが不可欠です。

特定技能の外国人が有給休暇を使いたいタイミングとは?


特定技能 有給休暇

ここでは、特定技能の外国人がどのようなタイミングで有給休暇を希望することがあるのか見ていきましょう。

外国人ならではの事情に配慮することで、職場への信頼感や定着率の向上にもつながります。

一時帰国でまとまった休みが必要なとき

特定技能の外国人が有休を取りたい理由として、もっとも多いものが一時帰国です。
一時帰国するには2~3日程度の休みでは不十分なため、有給休暇をまとめて取得したいという希望が出てきます。特に母国で家族の冠婚葬祭や重要な行事がある場合は、1週間以上の休暇が必要となることもあります。

一時帰国は事前に予定が決まっているケースもあり、早めに相談を受けることができれば、業務の調整もしやすくなります。年に1回以上は一時帰国することを想定し、徹底したシフト管理はもちろん、日頃からこまめにコミュニケーションを取るなどで、有休を取得しやすい環境を整えることが大切です。

また、特定技能の外国人が一時帰国するには、「みなし再入国許可」の手続きが必要です。みなし再入国許可とは、出国日から1年以内に日本へ戻る場合、あらためて再入国許可を申請しなくても入国できる制度です。手続きは、出国時に外国人本人が行います。出国審査時に有効な在留カードとパスポートを提示し、再入国出国記録(EDカード)の「みなし再入国許可による出国を希望します」の欄にチェックを入れて提出すれば手続きは完了です。

家族が日本に短期滞在するとき

母国から家族が一時的に日本を訪れるタイミングでも、有休の取得を申し出るケースが多く見られます。
とくに、特定技能1号では家族帯同が認められていないため、数年単位で家族と離れて暮らしているということも少なくありません。このような場合、限られた滞在期間の中でできるだけ家族と過ごす時間を確保しようと、有休を利用して数日間の連休を希望することがあります。

こうした事情を理解し、できるだけ希望に沿った対応を行うことで、外国人本人のモチベーションの向上や定着率の改善にもつながります。企業にとっても、プライベートの充実を後押しすることは、働きやすい職場環境づくりの一環といえるでしょう。

特定技能の外国人の有給休暇に関する注意点


特定技能 有給休暇

特定技能の外国人に有給休暇を取得してもらうためには、まず制度の仕組みを正しく理解してもらうことが大切です。日本での就労が初めてという人も多く、安心して長く働いてもらうためにも、事前にしっかり説明しましょう。
説明にあたっては、外国人本人が理解できる言語に翻訳された資料を用意したり、必要に応じて通訳をつけたりすることが求められます。社内での対応が難しい場合は、登録支援機関に委託することがおすすめです。

また、一時帰国を申し出られた場合は、基本的に有給休暇を活用して対応します。まとまった日数を必要とすることが多いため、申し出を受けた段階で速やかにスケジュール調整を行うことが重要です。
もし有給休暇を使い切っている場合でも、特定技能の雇用条件上、原則として無給休暇の取得を認める必要があり、業務上やむを得ない場合を除いて休暇の取得を拒否することはできません。単に「忙しいから」という理由で拒否すると、労働基準法違反となるおそれがあるため注意が必要です。
ただし、労働基準法に定められた「時季変更権」により、事業の運営に大きく支障が出る場合は、休暇の取得時期を変更してもらうことができます。時季変更権を行使する際は、理由を丁寧に説明し、代替の日程を提案するなど誠実な対応を心がけましょう。

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特定技能の外国人雇用は有給休暇制度の正しい理解と柔軟な対応を!


特定技能 有給休暇

今回は、特定技能の外国人の有給休暇について解説しました。
有給休暇は、特定技能の外国人を含め、すべての労働者に与えられる大切な権利です。付与日数や取得条件は労働基準法で定められており、特定技能の外国人にも日本人と同じように対応しなければなりません。制度の内容を正しく理解し、申請しやすい環境を整えることで、安心して働ける職場づくりにつながります。企業側も計画的な取得を促し、業務に支障が出ないよう日々のシフト管理を徹底しましょう。

また、外国人への有休制度に関する説明や申請方法などは、母国語で分かりやすく伝えることが求められます。自社での対応に不安がある場合は、登録支援機関に委託することも選択肢の一つです。

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